都市・まちづくりコンクール
名称 |
「都市・まちづくりコンクール」 |
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開催日 |
2014年3月2日(日)~3月4日(火) 審査・講評:3月2日(日) 表彰・懇親会:3月2日(日) |
会場 |
明治大学 GLOBAL FRONT |
特別審査員(敬称略) |
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審査員 |
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実行委員長 |
中野 恒明/芝浦工業大学教授 |
主催 |
総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会 |
3月2日(日)、会場となった明治大学 GLOBAL FRONTを舞台に「都市・まちづくりコンクール」の公開審査・講評が行われた。 主催は、都市まちづくり実行委員会と総合資格学院。第一回目の開催となる本年度は、全国より31作品が集まった。
これまで「建築設計」分野での学生コンペは多数あったが、「都市」や「まちづくり」に主眼を置いたコンペは稀であった。しかし、東日本大震災以降、「コミュニティ」や「まちづくり」といった分野が見直され、その分野に携わる技術者のニーズは高まっている。また、復興支援のために多くの若者が活動に参加・共感し、この分野に興味を持つようになっている。本コンクールは、このような状況も考慮しながら、「都市」や「まちづくり」といった分野をめざす学生に交流や切磋琢磨する場を提供し、より多くの若者がこの分野に参加することを期待するものである。 今回のテーマは、「駅」。「駅」の範疇を鉄道駅に限定するのではなく、交通・情報結節点(ステーション)としてとらえる課題だ。
特別審査員(敬称略)
審査員(敬称略)
実行委員長
公開審査当日は、まず午前中に審査員による巡回審査が行なわれ、最終審査に進む5作品が選ばれる。出展者は、作品の傍らに立ち、審査員との質疑を行いながら、作品のプレゼンテーションを行う。「都市・まちづくり」という分野の性格からか、審査員からは、地域の具体的な名称、具体的な平米数・距離、予算など実際的な数値や言葉で学生に計画の内容を確認する場面が多く見られた。時おり答えに窮しながらも、計画を自分の言葉で説明する学生の姿からは、相当量のリサーチと計画を考え抜いた様子が伝わってくる。
巡回審査後、各審査員が優秀だと思われる5作品に投票し、票が多く集まった上位5作品が最終審査に進んだ。 最終審査に進んだ5作品は、以下の通り。
最終審査は公開審査形式で行われ、5グループがそれぞれプレゼンテーションを行った後、質疑を行う形で進行していく。 プレゼンテーション10分・質疑10分という審査形式からか、学生はかなり詳細な計画までプレゼンテーションを行っている。プレゼンテーションでは、「住民の声」や「まちの名前」「鉄道・道路名」なども登場し、実際に詳細なリサーチを行った上での提案であることが伺える。最終審査に残っただけあり、どの案も単なる駅の計画ではなく、「駅」をどう捉えるかといったところまで考えを掘り下げた発想豊かな作品が多い。新しい駅のあり方、それによって生まれる新しい都市・まちの形をリサーチにもとづく「必要性」と共に提案している。
5作品のプレゼンテーションの後、特別審査員が推薦する3作品に投票。票を集めたのは、工学院大学(右田萌さん・松谷美穂さん)の「海に寄り添う拠り所」と早稲田大学(三浦春香さん・久保田琢斗さん・塩塚勇二郎さん・津田拡斗さん・小竹洋介さん)の「里水都市~あえのつむぐまち」だ。
この2作品で、特別審査員でさらに審議を交わし、その結果、早稲田大学「里水都市~あえのつむぐまち」が最優秀賞に決定した。自動的に優秀賞の1作品は、工学院大学となった。優秀賞のもう1作品については、同じ票数を集めていた慶應義塾大学と奈良女子大学について、特別審査員と審査員による挙手での投票が行われた。その結果、優秀賞は、奈良女子大学に決定。その他、各賞は以下の通りとなった。
最優秀賞 | 「里水都市~あえのつむぐまち」 「過疎化」「産業の衰退」が進む石川県穴吹町を活性化させるために、豊かな生態資源を活かし、生態系と生活・産業を捉え直した「里水都市」を構想する。「里水都市」とは、里山・里水・里海を活かした3つの駅を軽トラ市などでつなぎ統合していく構想。場所ごとの動かぬ拠点を据えるだけでなく、軽トラ市を動く拠点として提案している点がユニークだ。 |
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早稲田大学 ![]() |
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優秀賞 | 「海に寄り添う拠り所」 鎌倉から藤沢にかけての防災計画。津波災害の際に、機能する避難所に求められる要素として「認知度」「避難経路の定着」を挙げ、その機能をもつ施設として「駅」を取り上げた。「駅」は、津波を受け流す壁構造となっているため、津波災害時でも、矩体は倒壊しない。そのため、浸水深さより上に設定された2階屋上へと上がれば、一次避難所として機能する計画となっている。 |
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工学院大学 ![]() |
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優秀賞 | 「cross pointの風景」 淀屋橋駅が交通・自然・文化が交差・接近する土地であることに着目し、よりその土地の特徴を活かした『クロスポイントの風景』を作り出すことで淀屋橋地域の魅力を高めることを目的とした提案。駅の計画にあたっては、アトリウムなどを用いながら、鉄道駅と土佐堀川、市営地下鉄と京阪電鉄、自然と文化と駅などをつなげていく。地上の景色を地下に引き込み魅力的な駅の風景を実現する計画。 |
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奈良女子大学 ![]() |
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審査員特別賞 | 「歴史が宿る、まちの駅~重層する空間の歴史~」 |
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慶應義塾大学 ![]() |
審査員特別賞 | 「2000mの結節線 -2つの文化・賑わいを結ぶ街の駅-」 |
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日本大学 ![]() |
特別審査員 竹内 直文氏は、最優秀賞の早稲田大学の提案について、「縮小する都市の課程をデザインしている部分が非常におもしろいと感じた。軽トラ市などの移動する“手段”を駅として捉えたアイデアは、大規模な開発などが難しい都市を活性化するアイデアとして可能性を感じる」と語った。総評として、特別審査員の小林 英嗣氏からは、これから都市・まちづくりという分野をめざす若者に向けてコメントが寄せられた。「私は、今回の審査に当たり「地域が求めている声を空間や環境に置き換える力」「人の参加・協力を促す力」・「戦略をデザインする力」・「自分たちがアウトプットしたものをマネージメントする力」などの点を評価基準としていた。都市・まちづくりは、誰かが、ある時間の中で決められた金額を出してくれるわけではない。そういう意味で、建築とは異なる感覚が必要になるが、そこが魅力でもある。このコンクールを通して魅力を知って頂き、より多くの若者がこの分野に飛び込んできて欲しい」と語った。