第7回 2020 都市・まちづくりコンクール

レポート

第7回 2020 都市・まちづくりコンクール

名称 第7回 2020 都市・まちづくりコンクール
審査・表彰 2020年3月12日(木)
会場 審査会場:総合資格学院 新宿校
プレゼンテーション会場:総合資格学院 13会場
審査員/
実行委員

<審査員長 兼 実行委員>

  • 小林 英嗣 (北海道大学名誉教授 日本都市計画家協会会長)

<審査員 兼 実行委員長>

  • 小林 正美 (明治大学副学長 アルキメディア設計研究所主宰)

<審査員>

  • 江川 直樹 (関西大学教授 現代計画研究所顧問)
  • 角野 幸博 (関西学院大学教授)
  • 北川 啓介 (名古屋工業大学教授)
  • 柴田 久 (福岡大学教授)
  • 鳥山 亜紀 (清水建設 設計本部)
  • 中島 直人 (東京大学准教授)
  • 中野 恒明 (芝浦工業大学名誉教授 アプル総合計画事務所主宰)
賞金
  • 最優秀賞:1作品 賞金50万円
  • 優秀賞:2作品 賞金10万円
  • 岸トラベル賞:2作品 旅行券20万円
  • 審査員賞:9作品 賞金3万円
  • 奨励賞(事前審査通過・本選未入賞作品)):賞金1万円
主催 総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会

初の遠隔地間でのプレゼンテーション・審査で開催

総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会が主催する「第7回 2020都市・まちづくりコンクール」が、2020年3月12日(木)、総合資格学院 新宿校で開催されました。

本コンクールは例年、模型を前にしてプレゼンテーションを行い、一堂に会しての公開審査を実施していました。しかし今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、TV会議システムをつないだ全国の総合資格学院の教室をプレゼンテーション会場、新宿校の教室を審査会場として使用し、モニター越しに審査を行いました。

一次審査では、事前審査を通過した出展者による3分間のプレゼンテーションの後、審査員の投票によって最終審査に進む10作品が選出されます。最終審査ではそれら10作品の出展者にプレゼンテーション6分、質疑応答9分の計15分が与えられ、審査員による公開討議を経て各表彰作品が決定します。審査員賞については10選以外の作品も選考対象とし、各審査員が1作品を選出します。

今回の課題は「輪」。2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を記念しての題字です。この「輪」の字の意味を考えながら、市民協働のまちづくりやまちづかい活動などの、人のつながりによってその公的空間の質をより向上していく提案を求めるものです。

本コンクールの特徴は、「建物」だけではなく、建物周辺計画(都市・まちづくり)にまで設計と審査の領域を広げた学生コンペ(※)であることが挙げられます。「建物」を審査の主眼とする公開コンペは多くあるものの、「都市・まちづくり」を対象としたものは数少なく、建築・都市計画系の学生にとって、貴重な力試し、発表の場と言えるでしょう。

※建築・都市計画系の大学・大学院・専門学校等に在籍する学生が対象

 

【概要】*応募要項より抜粋

都市・まちづくりは社会構造の変化、少子高齢化、災害対策などにより、常に改変を求められるものであります。また、その目的も成果も多種多様であり、単にそこに存在する人々の「活性化」や「賑わい」だけが求められるものではなく、環境改善への貢献、歴史的意義やサステナブル都市としての要求等も常に求められる非常に有機的で難解な研究領域であります。こうした領域に取り組む学生の育成を図る目的で、自ら問題意識を見出した課題において、真摯に向き合い、様々なアイディアと努力により創り上げた力ある作品を募集します。学生達が生み出した景観や創造価値と作品に込められた熱意を評価し、また、他学との交流を通じて、さらに視野を広げてもらうことを期待します。加えて一般の方にも公開し、都市・まちづくりに対する理解、関心を深めます。

簡潔ながらもよく練られたプレゼンテーション

一次審査は、全110作品のエントリーから事前審査で選ばれた55作品の出展者が、制限時間3分でプレゼンテーションを行いました。1グループ5作品×3分に、質疑応答の5分をプラスした計20分を1クールとし、全11クールが、淀みないタイムスケジュールで進行しました。

プレゼンテーション会場

審査会場(新宿校)

互いの会場がカメラで接続される

映像とプレゼン資料をもとに審査が行われる

出展者たちのプレゼンテーションはいずれも、計画の背景・主旨・目的を簡潔に説明する、よく練られたものでした。秒刻みの正確さで3分ちょうどに収められており、今回のレギュレーションに対応するために練習を重ねたあとが垣間見えるプレゼンテーションでした。質疑応答では審査員から出展者たちへ、計画を実現させる具体的なプロセスはどんなものであるか、また地域・社会との関係性をいかに築いていくかなど、深く踏み込んだ質問もありました。出展者は皆、質問に的確に対応しており、綿密なリサーチや考察の深さが伺える、熱量の高さを感じられる一次審査となりました。

最終審査に進む10作品

一次審査後、各審査員が公開討議を行い、評価の高かった作品を選出し、投票。得票数の多かった上位10作品が最終審査に進みました。

【審査員】

小林 英嗣 氏
(審査員長)

小林 正美 氏
(審査員 兼 実行委員長)

江川 直樹 氏
(審査員)

角野 幸博 氏
(審査員)

北川 啓介 氏
(審査員)

柴田 久 氏
(審査員)

鳥山 亜紀氏
(審査員)

中島 直人 氏
(審査員)

中野 恒明 氏
(審査員)

■最終審査選出作品

         
名前 所属 学年 作品名
伊波 航さん 横浜国立大学 4年 バス亭の家-家が構成する街の輪-
宮西 夏里武さん 信州大学 3年 小さなおとなの大きな輪 -地方高齢者街区における集団防災網の再編-
荒川 恵資さん 明治大学 4年 29h-歌舞伎町
朱 泳燕さん 東京理科大学 4年 百人町のうらみち・まなびみち -留学生の生活から揺るがす住まいと都市-
草原 直樹さん 横浜国立大学大学院 大学院
1年
汎神論的設計態度でつくる暮らしの風景 -地形に沿う集落、高台移転のオルタナティブとして-
矢野 有香子さん
澤田 郁実さん
早稲田大学大学院 大学院
1年
あいまい空間による、らしさの継承とまちの更新
岩田 周也さん 東北大学大学院 大学院
1年
生態系境界の建築的調停 ー杜の都仙台2050計画ー
友光 俊介さん
山下 耕生さん
松本 隼さん
早稲田大学 4年 開かれた地平と生きる~堤防の狭間から~
早乙女 駿さん 芝浦工業大学 4年 祭りの眠る街で -3/365に現れる建築の二面性-
和出 好華さん
稲坂 まりなさん
内田 鞠乃さん
早稲田大学 4年 嗅い

最終審査は出展者にそれぞれプレゼンテーション6分、質疑応答9分が与えられ、一次審査と同じくテレビ中継を通じて行われました。 出展者たちは一次審査の倍の時間を活かし、改めて丁寧に計画の目的や計画地の選定理由、特徴を発表しました。

審査員からは、計画の詳細や別のプランなどを問う鋭い質問が投げかけられたほか、実践的な見地からのアドバイスがされるなど、モニター越しであることを感じさせない深いやり取りが行われました。 各作品のプレゼンテーションの後、各審査員が1人4点を持ち、最優秀賞と考える1作品に2点を、優秀賞だと考える2作品に各1点を投票して、最優秀賞1作品、優秀賞2作品が決定されました。

審査員全員から票を集め、圧倒的な得票で最優秀賞に選ばれたのは、東京理科大学の朱 泳燕さんの作品「百人町のうらみち・まなびみち -留学生の生活から揺るがす住まいと都市-」でした。 選出された各賞は以下の通りです。

最優秀賞

「百人町のうらみち・まなびみち
-留学生の生活から揺るがす住まいと都市-」

朱 泳燕さん 東京理科大学(4年)

写真2
写真2

<画像をクリックで拡大>

概要
日本は年々留学生の受け入れを増やしているが、本質的な体制は整っていない。様々な問題の原因は、日本語学校に学びが限定されているからだと考え、街や地域に住む、あるいは働く人々と接する新たな「学びの場」を提案する。多くの留学生が過ごす百人町において、建築・インフラの再編により、文化や知識を分かち合う場をつくり、高齢者や外国人なども含めた多様な人々の活動をつなげていく仕組みを考える。

【小林 正美氏】
使用者同士のつながり、周囲の活動のつながり、都市的なつながりという輪のテーマについて、とても丁寧に計画されており、完成度の高さを感じた。   

【角野 幸博氏】
留学生には様々なバックグラウンドがあり、特にアジア系の人からは楽しそうな街の提案に感じられると思うが、よりインターナショナルな、欧米系やアフリカ系などの多民族の視点から考えられているかどうかは気になった。

【中野 恒明氏】
孤立している人々を、地域で受け入れるシステムの提案であることがとても良い。Site1~3へと展開する計画それぞれが、ほぼ完璧に近い提案のプレゼンテーションとなっており、高く評価したい。

優秀賞

「バス亭の家-家が構成する街の輪-」

伊波 航さん 横浜国立大学(4年)

写真2
写真2

<画像をクリックで拡大>

概要
横浜市青葉区美しが丘のバス路線は、郊外住宅地における動脈としての役割を担っているが、街の平均的な住民像に合わせて計画されており、平均から外れた人々、例えば自家用車を処分した高齢者の孤立などの問題を抱えている。そこでバス停を「他人を招くための空間」として街の住民自身が所有し、後から路線がつくられることで新たなコミュニケーションが生まれ、街が活性化していく仕組みを提案する。

【江川 直樹氏】
空いているスペースを活かしてコミュニティーを増やす試みとして、実現の可能性は大きいと思うが、色々な人が交わる機会をつくるためには、バスに固定して考える必要はないかもしれない。   

【鳥山 亜紀氏】
かつての縁側にいたおじいちゃん・おばあちゃんたちの声のかけあい、助け合いの機会が無くなったことの代替として、新しい縁側をつくるという提案だと理解している。この提案によって例えば認知症にかかる医療費・介護費等が軽減されるということで、厚生労働省からの助成など狙えたら面白いと思う。

優秀賞

「開かれた地平と生きる~堤防の狭間から~」

友光 俊介さん/山下 耕生さん/松本 隼さん 早稲田大学(4年)

写真2
写真2

<画像をクリックで拡大>

概要
宮城県石巻市北上町十三浜は震災・津波による被害により、現居住地域から海を眺めることができなくなった。本計画では浸水域沿いに集落をつなぐ畦道を配し、浸水域内を海に見立てることで、海を眺望できる二つの建築を提案する。それらを軸に、神社、畦道、住宅地を結ぶ導線をつくり、十三浜に伝わる神楽文化・獅子舞が集落を練り歩く祭りを通じて地域の創出をめざす。

【北川 啓介氏】
高台に移転する居住地域と今回提案の建物との関係・つながりを強めるシナリオがあるともっと良かった。   

【鳥山 亜紀氏】
堤防をつくることを放棄した人々の心の中に、精神的な堤防、ラインを植え付けるという行為にはとても意義があると思う。

岸トラベル賞(2作品)

宮西 夏里武さん

信州大学
(3年)

写真2

和出 好華さん
稲坂 まりなさん
内田 鞠乃さん

早稲田大学
(4年)※

写真2
小林英嗣賞

糸岡 未来さん

信州大学
(4年)

写真2
小林正美賞

梅原 きよみさん

神戸大学
(4年)

写真2
江川直樹賞

草原 直樹さん

横浜国立大学
(大学院1年)

写真2
角野幸博賞

高梨 淳さん

東京理科大学
(大学院1年)

写真2
北川啓介賞

和出 好華さん
稲坂 まりなさん
内田 鞠乃さん

早稲田大学
(4年)※

写真2
柴田久賞

矢野 有香子さん
澤田 郁実さん

早稲田大学
(大学院1年)

写真2
鳥山亜紀賞

岩田 周也さん

東北大学
(大学院1年)

写真2
中島直人賞

荒川 恵資さん

明治大学
(4年)

写真2
中野恒明賞

宮澤 夏生さん

長岡造形大学
(4年)

写真2

(※)ダブル受賞

 

 

 

発表のあと、最優秀賞・優秀賞を受賞した3グループと中継をつなぎ、審査員たちが受賞者たちに大きな拍手を送りました。

各審査委員からの講評

【中野 恒明氏】
イベントの中止が相次ぐ中、ネット回線を使って開催しようと提案したのは私であるが、皆さんの負担を軽減しつつ、感染リスクを最小限にでき、実にうまくいったと思う。また過去6年続けてきて、全体的な作品のレベルも上がっているのを感じる。特に全員の投票の結果を鑑みるに、今回、最優秀賞に選ばれた朱さんの作品は過去最高点だったのではないか。皆さんには学校の後輩たちに、都市・まちづくりコンクールのことを伝えていただき、このコンクールのますますの発展に協力していただきたい。

【中島 直人氏】
質疑応答の中で、「この計画は誰が実現させるのか?」という話題が何回か上がった。学生のコンペにおいて、実現性の高さは重要視されないことも多い。クラウドファンディングや行政など、その答えは色々考えられる。これから重要になってくるのは、地域の中にある、街を再生させる力をどう引き出すか、その力を出せる人をどう育てるか、どう持続していくかを含めた提案をすること。これから我々の仲間になって仕事をしていく皆さんにおいては、そういった考え方を忘れずにがんばっていってほしい。

【鳥山 亜紀氏】
とても短いプレゼンテーションだったが、その中に凝縮されたものを感じた。どの作品もそれぞれ個性的で素晴らしかった。最初にプレゼン資料を見たときから、皆さんのプレゼンテーションを聞いたとき、審査員の先生方のご意見を聞いたときと、次第に思いも深まり、良い審査ができたので、受賞者は今日の結果に誇りを持っていいと思う。将来皆さんが研究を深め、設計や建築の世界に出ていくにあたっては、今日の先生方の言葉を胸に刻んでがんばってほしいと思う。

【柴田 久氏】
模型を目にせずに審査すると、自分の足で稼いだ調査で作品をつくった者と、そうでないところから組み合わせてつくった者の間に、提案の迫力の差が出たのを感じた。毎年思うことだが、今回は「輪」という課題であることは前々から発表しているので、そのテーマに対してどう提案していくのかがプレゼンテーションの戦略として大事であるということを、学生の皆さんには覚えておいてほしい。

【北川 啓介氏】
今回はじめて参加したが、作品の密度の高さを目の当たりにして、どれだけ皆さんが深く考えてきたのかを感じた。特に朱さんの作品は、プレゼンシートもきれいでわかりやすく、素晴らしかった。また「嗅い」を発表した和出さん、稲坂さん、内田さんも、継続してやっていければ、この3人ならではの作品ができると思うので、これからもこだわりを追究していってほしい。都市・まちづくりということで、プロダクトを世に出すだけに留まらない、行政や地域の人、投資する人たちやマーケットのこともしっかり考えた提案がされ、「そこに人がいる」ということのすごさを感じた。

【角野 幸博氏】
「この提案は誰に向けられたものなのか」を考えたとき、単体の建築であれば答えはクライアントであるが、都市・まちづくりとなると相手が見えないこともある。この街の、この人に向けての提案だ、というのを意識して制作してほしい。つまりその相手が、計画の中でどのような役割を持っているのか、そしてその計画がどのように実現され、維持されていくのかを、より深く考えた提案をしてもらいたい。そうすれば、このコンクールの特徴がもっとはっきり出てくると思う。

【江川 直樹氏】
皆さんがこれから社会に出て、建築や都市の専門家としてやっていくうえで、社会に対しての批評精神というものが一番大切であり、基本だと思っている。日常の中に疑問を見つけ、もっとこうしたらいいのではないか、と提案していく。我々専門家とはそういう人間である。今回の朱さんが正にそうであり、それこそが高い評価の理由ではないかと考えられる。今回のプレゼンテーションの形式にはある種の可能性を感じたので、また次回、平常時の開催であっても検討できればと思う。

【小林 正美氏】
どの作品もよくリサーチされており、密度が濃かった。地方都市の再生をテーマにしたものが多い中、新大久保を選定地にした朱さんの計画はどうなるかと思ったが、私たち日本人が30万人の留学生を受け入れておきながら環境整備ができていないという、耳が痛くなる話で、自分の体験を元にした提案はプレゼンテーションもわかりやすく、非常にレベルが高かった。コンクール開催の形式は、フェイストゥフェイスで直接話が聞けるのが良いと思うが、一方で、地方と中継して誰でも見られるというのは可能性を感じさせるものだった。

審査委員長からの総評

【小林 英嗣氏】
昨年である2019年は都市計画法ができて100年の節目でした。我々が住んでいる街はその法律の枠の中でつくられてきたわけですが、今回参加された皆さんは、全く違う視点から街のことを考え、仕事をしていく世代になります。

我々の世代は「スペース」をつくってきました。しかし人口も、国のお金も減る中で、これからもスペースをつくる必要はもうありません。皆さんは「プレイス」、つまり皆がいきいきと過ごせる、意味のあるアクティビティのための場を生み出していくことになります。自分なりのプレイスメイキング、すなわちシチュエーションを発見したり、つくったりすることが大切なのです。 そのとき、誰に対して共感のメッセージを出すのかを考えられる力、つまり「共感力」を持っていることが大切です。今日のプレゼンテーションでは、皆さんがその共感力を持っていることを感じることができました。

去年はラグビーワールドカップが盛り上がりましたが、神戸製鋼のキャプテンで平尾誠二さんという方がいました。彼は全体をよく俯瞰しながらチームでイメージを共有することで何連勝もされました。その彼がよく使っていた言葉で「イメージメント」というものがあります。ビジョン・イメージをチームで共有し、持続し、どんどん膨らませていくことが大事だというのです。 私たちにおいても、プレイスメイキングをして、いいものにつくっていくにはイメージがとても大切です。皆さんもこのことを心に留め置いて、次の世代へと日本をブラッシュアップして、光らせていってほしいと思います。